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特集 心筋梗塞
冠動脈からみた心筋梗塞の発症
Coronary Arteries as a Etiological Factor of Myocardial Infarction
戸嶋 裕徳
1
Hironori Toshima
1
1久留米大学医学部第3内科学教室
13rd Department of Medicine, Kurume University Medical School
pp.33-38
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202225
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はじめに
心筋梗塞とは「血流の完全な遮断による壊死の部分で,通常供給動脈の閉塞により,稀に流域静脈の閉塞により生ずる」と定義されている1)。この定義にも見られるように,従来から冠動脈の閉塞が直接死因にならなければ,心筋梗塞は不可避のことであり従って臨床的には冠動脈血栓症coronary thrombosisは心筋梗塞と同義語として用いられてきた。しかし最近では冠血栓と心筋梗塞の間には単純な因果関係はないと考えられてきている。Edwards2)は"what is myocardial infarction"と題して論述し,"梗塞は単に心筋虚血の一つの表われにしかすぎない"とし,また言葉を変えて"心筋梗塞は単に冠動脈粥状硬化の一つの結果にしかすぎない"とも述べている。
心筋梗塞発症の原因として冠動脈の粥状硬化athero—sclerosisが最も大きな,かつ重要なものであることには異論はないが,梗塞の発症に従来考えられていたような冠閉塞だけが主役ではないこと,副血行路の果す役割と血行動態の異常や小冠動脈も一部の役割をはたしていること3)4),カテコラミンなどをはじめとするいわゆるnon-obstructive myocardial infarction5)などが最近注目されている。本稿では心筋梗塞発症からみた冠動脈病変について最近の文献を中心にのべてみたい。
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