Japanese
English
特集 心筋梗塞
血行動態からみた心筋梗塞の発症
On the Onset of Myocardial Infarction with Special Reference to Hemodynamics
中村 芳郎
1
,
松村 紀高
1
Yoshiro Nakamura
1
,
Noritaka Matsumura
1
1慶応義塾大学医学部内科学教室
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.39-47
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202226
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はじめに
心筋梗塞症が正常の冠状動脈を有する例に発生することは稀なことであり,この疾患のほとんどの場合はその基礎に冠状動脈硬化症が存在していることは,心筋梗塞症に関与する血行動態変化は冠状動脈硬化に対する血行動態の影響として考えなければならない一面を有する。同時に,心筋梗塞症の病理解剖学的成績が,冠状動脈閉塞のない例が少なからずあることを示すように1)〜3),冠血流量と心筋梗塞の関係からも論じられねばならぬことになる。さらに冠状動脈閉塞があって心筋梗塞をおこさぬ例があることは,副血行路の開通により梗塞がおこらないと考えられる4)〜6)が,血行動態変化が副血行路形成または開通に何かの影響を与えているか否かの考察も,血行動態と心筋梗塞発症の関係を論ずるために必要となる。これらの問題はいずれも解明困難であるが,特に冠血流量ないしその他の血行動態と心筋梗塞発症との関係は,臨床的に発症直前のデーターを得ることはきわめて困難であり,例えば急激な血圧下降が心筋梗塞発症の直接め原因であると言うような結論を得ることはできない。実際に見られる多くの報告も発症前よりも心筋梗塞発症による血行動態の変動に関するものに限られていると言える。
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