今月の主題 心筋梗塞—今日の問題点
心筋梗塞と凝固・線溶・血小板
山崎 博男
1
,
本宮 武司
1
1東京都臨床医学総合研究所循環器研究部
pp.10-11
発行日 1977年1月10日
Published Date 1977/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207011
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凝固・線溶・血小板は心筋梗塞の病態に3つの異なったステップで関与している.第一は心筋梗塞の発生基盤である冠動脈硬化の発生においてである.最近,動脈硬化の血栓説が再重視されてきているが,これには血小板が血管内壁に粘着したとき,血小板から放出される血管透過性亢進物質が血管傷害を起こすという数々の知見があずかっている1).このとき凝固・線溶系の関与も重要である.一方,健康な内膜には血小板は粘着せず,粘着部内膜には必ず傷害があることについても報告は多いが,血管内膜に粘着した血小板からADPが放出され・他の血小板がこれにより凝集して,血栓の根である血小板塊を作り,凝固系の活動も伴って冠動脈血栓が出現すれば心筋梗塞が起こりうる.これが第二のステップでの役割といえよう.この血小板凝集に血漿中vonWillebrand因子が必要との報告があるが,同因子欠乏のブタで動脈硬化がみられぬことから,同因子の動脈硬化発生における役割に興味がもたれるに至った2).第三のステップは心筋梗塞が起こった結果の凝固・線溶・血小板の変化である.心筋梗塞の剖検で冠動脈血栓を認める頻度は0〜96%と,報告に大きなばらつきがある3).Roberes(1972)は心不全,またはショックを伴った症例に高頻度に血栓を認め,急死例には少ないことから,冠動脈血栓は心筋梗塞の結果の産物との立場をとっている.もし梗塞が起こり,血流が途絶すれば,血小板・凝固・線溶系は強い影響をうける.
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