Japanese
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講座
肺胞気組成の呼吸サイクルによる変動
Change in Alveolar Gas Composition during a Respiratory Cycle
諏訪 邦夫
1
Kunio Suwa
1
1東京大学医学部麻酔学教室
1Department of Anesthesia, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.765-769
発行日 1969年9月15日
Published Date 1969/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202065
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はじめに
呼吸死腔に関するHaldaneとKroghとの論争から半世紀を経た今日でも,"肺胞気とは何か"という問に対する答えは必ずしも明確になされたとはいいきれない。Rahn1)とRiley & Cournand2)によって創始され,その後20年にわたる検討をうけた"mean alveolar air"あるいは"ideal alveolar air"なる概念は,O2—CO2 diagram3)の普及をともなって換気血流関係に関する我々の認識を大巾にました。
しかしながらこのような議論に伴う抜きがたい空しさ——といったものが存在するとしたら——の原因の一つは,それが換気を定常流としてあつかうことによって始めて,肺胞気組成について一つの規準を提出することに成功しているという事実である。
けれども現実の肺胞換気は,そしておそらくは肺毛細管血流さえも4,5),決して定常流ではなく,したがって微視的に一つの肺胞をとりあげてみても,この肺胞気が呼吸サイクルによって変動していることは,Haldaneの叙述6)などをまつまでもなく,呼吸生理を知る大多数の人々には直観的に明らかであろう。本講座においては,この呼吸生理学の主潮では比較的等閑視されながら実は多くの人々の心にかかっている問題が,それでも少数の人々によって挑戦をうけ,解明されてきた様子を述べ,最後にその概念を応用することによって今まで知られている事実の説明として別の機構が考えられうる例を著者自身の研究を用いて紹介したい。
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