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はじめに
器械で計測する数値には変動があるところから統計学ではこれを変量(variate or variable)と名づけている。疫学調査で対象となる集団において得た変量に関するデータには,器械など計測する側の条件を一定にしてもなおバラツキがみられる。これは被検者の側の種々の条件が,この変量に対して個体差として影響を及ぼすためである。
このような疫学調査のデータによって,何かある検査に関する変量の比較を行なう場合,異なった条件のためのバラツキを持つ集団を比べるのは無意味である。このバラツキを少なくするためには,比較される群は互いにほぼ同一条件になければならない。また何らかの因子による影響を調査するときには,さらに厳密な種々の条件規制が必要となることもあろう。
ここで呼吸機能検査を取り上げてみると,2つの群に対する環境の影響の差をみるような場合,性,年齢についてはもちろんのこと,喫煙量や身長などの身体計測値についても条件を一にした群を比較することが必要である。例えば換気機能検査としてVC (vital capacity:肺活量)を測定したとすれば,これが成人ではBaldwineのVC予測式〔♂:(27.63-0.112×年齢)×身長(cm),♀:(21.78-0.101×年齢)×身長(cm)〕にみられるように身長に関連があり,若年者ではLudwigの予測式〔♂:(40×H)+(30+W)−4400,♀:(40×H)+(10×W)−3800,Hは身長(cm), Wは体重(kg)〕のごとく身長と体重が関連を持ってくるからである。このように検査成積に種々の条件が関与してくるとなれば,可及的に条件を整えた群でもなおこれらが個体差としてデータのバラツキの因を作ることになる。したがってそれぞれの検査においてどのような条件が関連しているかを検討することが必要となってくる。
そこで,数年来大気汚染の呼吸器に及ぼす影響調査の一環としてわれわれが実施している疫学調査1)結果のうち,oscillation法による呼吸抵抗値に関する成績を例にとって,データのバラツキに関連する因子について考察を加え,かかる点を考慮しつつまとめた結果を述べてみたい。
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