Japanese
English
特集 InsufficiencyとFailure (呼吸・循環機能を中心とした概念について)
生理学の立場から
Insufficiency and Failure—from the Standpoint of Physiology
高木 健太郎
1
Kentaro Takagi
1
1名古屋大学医学部第1生理学教室
1The First Department of Physiology, School of Medicine, Nagoya University
pp.27-29
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201978
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Ⅰ.心臓のiusufficiencyとfailureについて
身体の要求に応じた適当な心拍出量が維持できないような状態に次第に進行してゆくときに,心疾患が発生する。このようなときに心臓はfailingにあるという。このうち,うっ血性heart failureが最も多く,これはhypervolemia,左右心の静脈床の血圧上昇のような症状があるときに名付けられているが,血液動力学的な異常に根拠をおいて定義されたものではない。最終的には心筋の能力低下が原因であり,その結果としてheart failureの症状があられるものである。原因としては心筋への慢性的の過負荷たとえば高血圧,弁膜疾患,先天性奇型または甲状線機能亢進,さらに心筋そのものに直接障害を与えるもの,たとえばリューマチ性発熱,冠状血管のアテローム性動脈硬化症,心筋硬塞,稀には薬物その他の中毒などがあげられる。
ここに注目すべきことは弁膜閉鎖不全(valvular in—sufficiency)はheart failureの原因であるということである。正常では心臓の効率は25%であるが,failing heartでは15%以下であり,運動時には正常では効率は夏によくなるが,病的心臓ではよくならない。実験的に作ったうっ血性heart failureのイヌの心筋のmyosinの分子量は750,000であるが,正常では225,000であるという。またこの異常のmyosinから作ったactomyo—sinは正常心のものより収縮性が低い。結局heart fa—ifureに陥った心臓の心筋は筋の収縮機構の本質に異常をきたしていると見るべきであろう。
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