Japanese
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講座
呼吸死腔
Respiratory Dead Space
藤本 淳
1
Kiyoshi Fujimoto
1
1大阪府立成人病センター
1Center for Adult Diseases, Osaka
pp.1021-1025
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201965
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はじめに
死腔とはある目的を果たすために不必要な空間を表わす語である。これが肺機能について適用されるときは呼吸死腔(respiratory dead space)とよばれ,解剖学的意味では呼吸上皮と外界とを結ぶ気道の容積を,生理学的意味では換気により肺胞に出入するガス量のうち直接にガス交換に関与しない量を表わしている。
死腔の概念が肺の生理に導入されたのは1882年Zuntsによったもので,当時は解剖学的なものであった。これは当時は肺胞内のガス動態に関する研究が不十分であったからともいえる。
その後肺胞換気,そしてガス交換の肺生理についての研究が進むにつれて,生理学的肺機能の面から死腔を考えようとする努力がなされ,呼吸死腔の概念がいろいろと検討されたのである。この進歩の間に呼吸死腔の語の解釈には様々なものが出現し,混乱を生じることにもなった。この混乱は肺機能の進歩の歴史を示しているともいえるが,その原因は肺の換気が均等な分布をしていないこと,ガス交換に関与するガスも均等に混合するとは限らぬこと,その他測定するために使用される指示ガスについても同一態度をとらぬことなど,肺機能検査に関する根本的問題が含まれているのである。
臨床の実際でも,分時換気量や一回換気量よりも肺胞換気量すなわち死腔量を知ることが肺機能をより生理学的に表現することになるが,このさいにも測定方法の原理を考えて慎重に判断を行なわなければ真の価値を表わすことにはならぬことに注意しなければならない。
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