Japanese
English
綜説
死腔
Respiratory Dead Space
山林 一
1
,
藤本 淳
1
Hajime Yamabayashi
1
,
Kiyoshi Fujimoto
1
1大阪府立成人病センター
1The Center for Adult Disease, Osaka.
pp.561-567
発行日 1963年8月15日
Published Date 1963/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201233
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I.はじめに
1882年Zunts1)によつて始めて死腔(respir—atory dead space)の概念が生理学に導入されて以来すでに80年を経過した今日,死腔をいう言葉乃至概念の解釈についてはなおかなりの混乱があり,またその測定法,測定値及びその意味づけについても,未だ多くの未解決の問題点が残されている現状である。この混乱の原因としては,第1に我々が死腔という言葉を聞く時,それは或る一つの固定した解剖学的なspaceを連想するのが当然であり,また死腔の考え方そのものは歴史的にそこから出発したのであるが,死腔の測定法として今日まで用いられてきた大部分の方法は,このような単純な解剖学的因子の他に,呼吸運動並びに肺胞内ガス交換の結果としておこる複雑な因子の変動をも含めた一種の機能的な量を測定することに起因する。第2に現在死腔の測定法として最も広く用いられているBohrの式を応用する場合,肺胞ガス濃度が必要となるが,その採取法,測定法並びに生理的変動については,なお多くの問題点が残されているためである。例えば測定に用いるガスの種類(所謂foreign gasと生理的ガス)によつて当然肺胞ガス濃度の意味するものが異り,このためBohrの式によつて算出される死腔量を異種ガスについて同一に論ずる事は出来ない。これは1800年代の後期に始つたHaldane一派とKrogh一派の有名な論争の一因である。
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