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はじめに
努力性呼気量(FEV)は現在日常臨床においては主としてスパイログラフィーによって測定され,各種肺疾患の閉塞性換気障害の把握に賞用されているが,実はFEVのもつ換気力学的観点からみた正しい意義づけに関しては今日なお未解決な点が多々あり,その点FEVに関しては"仮定をお忘れなく"というよりはむしろ仮定以前の種々の問題点が多く内存されている。
FEVに関する研究の歴史は古く,1892年Elnthov—en1)以来のことであり,その後多くの呼吸生理学者あるいは胸部臨床医家に注目されてきたが,その理論的な発展をみたのは比較的最近のことであり,とくに1958年Fry2), Hyatt3)らのいわゆるflow-volume曲線の分析,あるいは1959年Fry4)の理論式の提唱をキッカケとして主として,メカニックスの分野から解明への努力がなされつづけ,この努力がMead5)のequal pres—sure point theoryを生み,さらにはFryのアナログ・ジキタルコンピューターによる理論的解析へと進んでいる現況である。しかしながら,これらの努力にもかかわらずFEVにはなお仮定以前の諸問題があり,ここでこれらの主な諸点を列記すると, 1)気道系各部位における弾性特性とその肺内分布
2) mechanical time constantの肺内不均等分布
3) speed of shorteningの問題
4) chest wallの弾性力の関与
5) staticに測定された肺弾性収縮力がFEVな どのdynamicなeventにそのまま適用しうる か?
6)気道系のtransmural pressureの壁外圧と して胸腔内圧がそのまま適用しうるか?
などの点があり,これらの詳細な解明への道は老いの坂道にも等しくきびしいものであろう。
そこで今回はこれらの諸点を背景として主として理論面からFEVにおけるMcllroyら6)のrelaxed expi—rationからMeadのequal pressure point theo—ryまでの道をたどりながらFEVに内存する複雑なメカニズムをながめてみたいと思う。
FEVにおける"forced"のもつ意義を把握するためにまず"非努力性呼出"のpatternとして安静換気時にみる呼出,および最大吸気位からのrelaxed expi—rationにみる呼出のメカニズムから簡単に述べてみたいと思う。
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