Japanese
English
臨床
心筋代謝賦活剤についての考え方
Pharmacologic Aspect of the Agents Affecting Myocardial Metabolism
岳中 典男
1
Norio Takenaka
1
1熊本大学医学部薬理学教室
1Dept. of Pharmacology, Kumamoto University Medical School
pp.639-643
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201623
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はじめに
心臓の機能は,筋収縮と弛緩とのくりかえしであって,その作業の力学的解析は古くから行なわれ,近代電子工学は人工心臓の可能性を予言している。これに比し心筋代謝の研究は,近々10数年にはじめられ,生化学的知見の集積はあるが,なお今後の究明をまつ問題が多い。心仕事のエネルギーとして外部から与えられるものは機械的なものではなく,化学物質である。心筋はこれを酸化して機械的エネルギーへ転換し,筋収縮のために不断の力源を補給しなければならない。そこには人工心臓からはまったく想像もつかない複雑な物質の流れがあるのである。
心筋の代謝面が明らかにされるにつれて,人工的にその代謝路の化学反応を加速して心機能を高めようとすることは,物理的模型化と同様,とうぜんの考え方であろう。最近,代謝賦活剤として開発されつつある製剤は,従来の強心薬が体外性の異物であったのとは趣を異にし生理的に代謝経路に見出される物質である。これら製剤は,試験管内での作用が確立されているという点では生化学的根拠をもっているが,外部から与えて生体内でも同一の活性を発揮するとの保証はないのである。賦活剤というのは薬理学的に体系づけられた名称ではない。
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