今月の主題 神経内科の動き
知っておきたい薬物療法
脳代謝賦活剤の使い方
海老原 進一郎
1
1慶大内科
pp.1451-1454
発行日 1974年11月10日
Published Date 1974/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205665
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はじめに
わが国において脳代謝賦活剤という名称が用いられるようになった端緒は,相沢らが生体外から投与したATPの脳に対する薬理作用を検討し,ATPがin vitro,in situいずれにおいても脳組織の代謝賦活作用を有することを明らかにしたことにはじまる1,2).その後,生理的な脳代謝経路に関連するいろいろな薬剤の脳代謝機能低下を伴う諸疾患に対する効果が報告され,それらの多くは実験的,臨床的に脳代謝を賦活することが明らかとされてきた.そこで,このような各種ビタミン,酵素,補酵素,中間代謝物質など正常な脳代謝経路に存在し,実験的,臨床的に脳代謝を促進するような薬剤が脳代謝賦活剤という概念で整理され,脳血管障害,意識障害など脳機能の低下を伴った病態に対し,脳代謝を正常化し脳機能を改善する目的で用いられるようになった3〜6).しかし,これらの薬剤を生体外から投与した場合,どの程度細胞内で生理的な代謝過程に関与し得るかという疑問がのこされている.したがって,なぜそれらの薬剤によって脳組織の代謝が賦活されるのか,その作用機序を明らかにするためには今後多くの検討が必要であろう.その1つの可能性として五島7)は,チトクロームCでは細胞膜が異常状態になった場合,ある程度細胞内に取り込まれることを示している.いずれにせよ,以上のような成り立ちを考え,個々の脳代謝賦活剤をどう使うか,この小論が多少とも参考となれば幸いである.
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