巻頭言
麻酔ガスの排出と生体画分量
恩地 裕
1
1大阪大学医学部麻酔科
pp.87
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201548
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笑気ガスの排出されていく過程を10年まえに研究しはじめ,2年ほどで大体の様子がわかった。それは,一定濃度の笑気ガスを用いて人体を飽和させておき,大気を呼吸させて,時間的に呼気中の笑気濃度がどういうふうに変化していくかを測定したわけである。そうしてできた,排出濃度時間曲線をみると,何だか3本の線の結合のようにみえた。大気呼吸開始後2,3分の間に濃度は急に減少し,それから20分はややゆっくり減少し,さらにそれ以後は非常にゆっくりと60分程かかって減少していく。この過程を単時位時間の排出量を半対数グラフにとって書いてみると,3本の直線の合成と考えられた。そのおのおのについて指数函数y=Ae—ktを求めて,これによる計算値と,実測による排出量を比較すると,非常によく合致することがわかった。そこで,話がやや飛躍して,この三つの指数函数は,それぞれ,ガスの排出に関して異った特性をもつ体の三つの画分を示しているのではないか,ということになった。そこで,体の画分量を測定する方法として,人体を空中と水中で重量を測定して,比重を求める方法を用いてみた。その結果と,その函数で表わされる画分量A/kλ(ただし,λはその画分における笑気の溶解度)を照合してみると,非常によく合致する結果になった。
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