巻頭言
見果てぬ夢
中村 隆
1
1東北大学医学部内科
pp.327
発行日 1965年5月15日
Published Date 1965/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201440
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Medicineとは窮極において病を治す,または予防する学あるいは術であろうが,そのためにはまず生体の病態をできるだけ正しく,かつ詳しく知ることが望ましい。その前提として生体内臓器の機能異常を正しく把握することが必要であろう。即ち臓器組織が本来生命の保持を目的として遂行しているあらゆる機能を捉えてこれを検出し,それぞれの機能について臓器全体としてどのようなおかされ方をしているかを知ることが必要であろう。たとえば,それらの機能とは肝では糖質代謝,蛋白質代謝,解毒,異物排泄能などであり,腎では腎血行機能,尿細管機能,糸毬体機能などに相当しよう。今日臨床的に用いられる多くの検査法は,これらの機能をパラメーターとして,その臓器が全体として現在どのように働いているかを知ることを目的としたものである。もちろんかかる検査はそれなりに価値があるけれども,病態把握という観点からすれば,なお不十分のそしりをまぬがれないであろう。たとえば近年著しく発達した臓器循環にしても,現在行なわれる多くの検査は臓器全体としての異常の把握であり,実際に個々の臓器内でどのような異常循環が形成さかつつあるかを物語るものではない。私が副血行路,或いは副行循環という一見極めて奇異なテーマをとりあげたのもすべて上述の意図に基づいている。爾来約10年,この研究を,臓器循環の面からどうやら疾病病態の解明に活用しうる段階まで持ち来たし得たとひそやかに自負している。
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