Japanese
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講座
CO2代謝 (1)肺
CO2 Transport and CO2 Elimination (1) Lung
伊達 俊夫
1
,
中島 亨
1
Toshio Date
1
,
Akira Nakajima
1
1慶応義塾大学医学部内科学教室
1Dept. of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University.
pp.569-577
発行日 1963年8月15日
Published Date 1963/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201234
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I.はじめに
近年呼吸器疾患の臨床に肺生理学の考え方が導入され,検査法の進歩とあいまつて肺機能障害の研究はいちぢるしい進展をみせた。肺機能障害の綜合的結果としてもたされる血液酸塩基平衡の異常に関しても最近多くの臨床的知見が得られ,わけても呼吸性アシドーシス—CO2中毒症候群—が呼吸器疾患の死亡要因として重大な意味をもつことが注目されて以来,われわれ臨床家にとつてもCO2の生理生化学的役割を再評価,再認識することが要求されている。
いうまでもなくCO2は組織代謝の終末産物として産生され,血液によつて輸送され,肺から体外に排出されるのであるが,CO2として肺から排出される"酸"は1日13000mEqに達するといわれており,腎から排出される酸が1日40ないし80mEqであることとくらべると肺によるCO2排出が生体の酸塩基平衡維持にとつていかに重大な意味を持つているかが理解できよう。CO2の輸送および排出にあたつては数多くの物理的,化学的過程が存在し,それによつて能率的にかつ合目的的に老廃物の廃棄と酸塩基平衡の維持が行なわれている。血液中に含有されるCO2量が水に溶解するCO2の約20倍に達することや,血液が多量の酸を輸送しているにもかかわらず静脈血pHと動脈血pHの間にはごくわずかの変化しかないことを考えただけでも生体の調節機構の精巧さをうかがうに充分であろう。
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