肺胞内ガス交換のモデル

Analogue Model of Gas Exchange in the Lung.

　近年生体現象の解明に生物理学的（biophysical）な考え方が次第に重要視されるようになってきた。とくに呼吸，循環，体液のバランス，体温調節，刺激反応等における生理学的なcontrolとregulationの複雑な機構と制御について，その生体糸および現象に物理的にも機能的にも類似した簡単なモデルを応用し，まずそのモデルの解析を出発点とする研究方法論が有力となりつつある。たとえば呼吸生理学においては，肺—胸廓系の換気力学的な動きのモデルとしてゴム風船や，電気的なR-C—L回路を用いたり，数億もある肺胞の機能を，一つまたは二つの肺胞で代表させたりする。

　われわれ医学にたずさわっているものにとっては，このようなbiophysicalな考え方は比較的不慣れであり，得意ではない。それでここでは肺胞におけるガス交換という現象のモデル化の方法を中心として，主として例をあげて解説してみたいと思う。