巻頭言
人間と電子装置の寿命
阿部 善右衛門
1
1日立製作所中央研究所
pp.559-560
発行日 1963年8月15日
Published Date 1963/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201232
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人間のような生物の寿命と,テレビや電子計算機のような電子装置,一般には無生物的な何等かの装置の寿命とでは,その傾向は大分違う様に考えられがちである。それには3つの理由があげられよう。第1は精神的なものの有無であり,第2は自癒作用の有無で,第3は生殖作用のそれである。
第1の場合は,範囲は大分狭くなるが自主性の有無といい直しても良いかも知れない。生物はこれをもち,無生物はこれをもたないからである。もつとも例えば人間の生命はその心臓の鼓動の有無から判断されるが,電子装置の場合はその様に単純でなく,所期の性能をもつかどうかで判断される。ゆえに死んでから又生きかえるということが,極めて簡単に行えることになつて,両者の比較が簡明でないから,ここではその様な再生は考えないこととしよう。ところでこの様な自主性の問題は電子装置にはもたせ得ないであろうか?ということが先づ問題である。最近の様に工学が大きく発展し,それに関連した色々な技術が進んでくると,教えたことは人間よりも良く覚えていて,その範囲では自主的な行動をとらせうる。例えば電子計算機に碁を教え込み,人間と勝負するなどのことは良く知られたことである。
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