巻頭言
小児呼吸器疾患研究の方向
村上 勝美
1
1日本医科大学小児科学教室
pp.335
発行日 1963年5月15日
Published Date 1963/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201204
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わが国の呼吸器疾患の状況はこの数年間に大分変つて来ている。この現象は数において圧倒的に多かつた結核死亡がめだつて減少したことに因ることはいうまでもない。小児科領域においては,そのことはなお一層著明であるだけに当面の問題から結核症がはずれてしまつているという印象が強い。又,そのことは世界的,ことに先進国全般にもあてはまることである。昨年秋,リスボンで開催された第10回国際小児科学会の演題を見ても,結核症に関するものは少なく,ただ南欧,南米,中米から出題されており,その内容も前回とは著しく異つている。たとえば,化学予防,後遺症(肺門腺結核による無気肺後の気管支拡張症)の予防,非結核抗酸性菌,ステロイドホルモン併用療法,外科的療法などが主なものであつた。要するに結核症についてはdeveloping coun—triesにおいて今後問題となるものであろう。
現在もなおわが国では乳児の死因の中で重要なものとして肺炎・気管支炎のような急性呼吸器疾患がある。たとえば昭和25年度と29年度を比較してその死亡の減少率を見ると,肺炎・気管支炎は19.9であるのに比し下痢腸炎は52.4で,実数について前者は後者の約3倍の死亡である点から,又前者が死亡順位の第2位にある点からゆるがせにならない問題となつている。
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