巻頭言
大気汚染に原因ありと思われる呼吸器疾患の研究の方向
宝来 善次
1
1奈良医科大学第2内科
pp.707
発行日 1963年10月15日
Published Date 1963/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201250
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呼吸と循環の雑誌も発刊されてから相当の年月を経て次第に発展してきた。この間多数の論説,論文が掲載され,呼吸器疾患,心,循環疾患の研究の進歩がうかがわれる。慢性の呼吸器疾患は多かれ少なかれ循環器系への影響が認められるので,呼吸と循環の場では最も重要な研究課題としてとりあげられる。現在慢性の呼吸器疾患のうちではなお,肺結核が多数にあり,その研究範囲も広く残されている。なかんずく,薬剤耐性結核菌によるものがとくに注目され,多数の研究者を立往生させている。このような肺結核は肺組織の欠損をおこし,肺機能の障害を伴ない,心,循環器への影響があるので,この方面の研究も大いに開拓されねばならない。肺癌は予後不良であり,死の恐怖を呼ぶものという点で,病因的な研究に力が注がれ,早期診断手技の究明に研究の手が拡げられ治療法の確立に努力が払われている。その他については,慢性経過の各種感染症,肺寄生虫症,気管支喘息,肺循環障害,肺気腫,肺線維症などの研究が大いに論議されるようになつた。そしてこのような呼吸器疾患においては心肺機能の研究が常に重視されている。
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