診療指針
新肺動脈撮影法と今後の行き方
太中 弘
1
Hiroshi HUTONAKA
1
1日赤中央病院外科(太中外科)
1Surgery, Red-cross Center Hospital
pp.293-300
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200237
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緒 言
吾が国に於ける肺動脈撮影に関する歴史はかなり古いものである。(吾が国の文献的考察の詳細に就いては日本外科学会雑誌43巻2号の太中著肺動脈撮影に関する論文を参照され度い)しかしそれ等の術式も用いられた造影剤も今から見れば歴史的存在であつて,レントゲン写真も鮮明ではなかつた。この方面の本格的な研究は故斎藤教授門下の今村,石川両氏(日本外科学会雑誌40回9号)によるものが始めてであろう。両氏は術式,或る種の疾患に現われる肺動脈像,動物実験,人体応用の結果を詳細に報告し,造影剤の心臟からの排出状況を映画にも撮影した。しかしながら当時は肺動脈撮影に関する限り,無刺戟性の造影剤がなかつたので撮影時に全身麻酔を用いなければならなかつた。それ故レントゲン撮影にも自ら制限があつた。即ち撮影方向は一方向に限られた。従つて肺動脈の分岐状況を立体的に観察することは不可能であつたし,肺内での造影剤の移動状況,更には肺門部に於ける肺静脈の出現状態を捉えることは困難であつた。私はこの点に着目し,何とかして無麻酔下に肺動脈撮影を実施出来ないものかと考えて考案したのがヨードナトリウムとトロトラストを混合して使用する方法である。幸いこれに成功して略々同じ状態で二方向,時には三方向の連続撮影に成功した。又当時は日華戦争下で胸部の戦傷による種々な疾患の患者が多数見られたので,これ等に応用し興味ある結果を得た。
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