巻頭言
もつと生物学的な観方を
高木 健太郞
1
1新潟大学(生理学教室)
pp.183
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200222
- 有料閲覧
- 文献概要
生理学の中でもつとも早期に発展したものは呼吸及び循環の生理であり,更に物理学や化学を最も密接に関連して来たものも呼吸や循環の生理である。それだけに今になつてみると,生物学的な観方が最もなおざりにはされて来たものも呼吸と循環の生理といえぬことはない。
側臥位をとると上になつた側の発汗が増加すると同時に,上側の皮膚血管も拡張することが証明されたとき,同じ機序が鼻にも適用されて,側臥位をとつたとき上になつた側の鼻がつまり,下になつた側の鼻は通る筈であると考えた。自分の経験や数人の人にたずねてみると,まれにそんなこともあるが,大多数は下側の鼻がつまつて,上側の鼻は通るということであつた。そこで私は鼻甲介血管には皮膚と同様な反射があるにはあつても非常に微弱であつて,それよりも物理的な血液の静水学的な鬱溜がこの場合には優位をとると考えておつた。これも今から考えるとおかしい点があるのであるが,一般に信じられているように唯何となくそう考えこんでしまつたのである。鼻汁が下側の鼻腔に流れこんでくるためだというようなことはちよつと深く考えれば,全くとるに足らぬ考え方でありながら案外医者の中にもそう考えている人が多い。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.