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アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)とは
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM;allergic bronchopulmonary mycosis,複数-ses)とは,真菌が下気道に定着し,これに対して気管支喘息をはじめとするアレルギー反応を繰り返す疾患である.いずれも下気道に定着した真菌に対してⅠ型,Ⅲ型あるいはⅣ型アレルギーが惹起される.このなかでも特にAspergillus spp.を原因菌とするものをアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA;allergic bronchopulmonary aspergillosis)と呼ぶ.ヒトの生活環境中には様々な菌種の真菌が無数に浮遊しており(主に胞子の形態と考えられている),その多くは胞子の直径が2~数ミクロンであり肺胞や下気道に容易に到達する.菌種別では大気中に漂っている真菌の多くはCladosporium spp.のような黒色真菌およびPenicillium spp.であるが,これに対しABPMの主たる原因となるアスペルギルスなどのような菌種は大気中の浮遊真菌のごく一部を占めるにすぎない.このことから,環境中に浮遊するごく一部の菌が特殊な性質を持ち,これによりABPMの原因となっていることが推測される.アスペルギルス以外の原因真菌としては様々な報告があるものの,近年,真正担子菌(いわゆるキノコ)の1種であるSchizophyllum commune(スエヒロタケ)を原因とするABPMが数多く報告されるようになり1),現在,S. communeはABPMの原因菌としてアスペルギルスに次いで重要な地位を占めるようになった.ABPMの発症機序に関しては不明の点が多いが,いずれの菌種の場合も菌側の要素とホスト側の要素の両方が発症に関与しているものと推測されている.そのなかでもABPAに関しては近年研究が進み,新しい知見が蓄積されつつある.本稿ではABPMの病像や成立機序に関して紹介したい.なお,真菌に対する強いアレルギーを示すものの菌の定着がみられない気管支喘息をSAFS(severe asthma with fungal sensitization)2)と呼びABPMとは別の概念である.
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