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厚生労働省の統計によると,2012年に癌で死亡した人は36万963人,部位別には男女合わせて肺癌が最も多く,1年間に71,518人が死亡している.これは癌死亡の20%にあたり,全死亡で見ても6%に相当し,単独でも死亡原因の第6位に位置する.一方で2012年の慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)による死亡者数は16,402人と死因別死亡数の第9位(肺癌死亡の23%)であるが,COPDは,推定の患者数が500万人以上推定されている.COPDと肺癌は,喫煙関連肺疾患であり,COPDの増加に伴って合併肺癌症例の増加が見込まれる.なぜならば,COPD患者では肺癌の発症リスクが10倍高くなると言われているからである.一般成人で肺癌という病気を知らない人はないであろう.しかしながらCOPDの病名はまだほとんど普及しておらず,2012年の調査ではどのような病気か理解しているのはわずか8%であり,今後はCOPDという病名と共に啓発活動を行っていくことが非常に重要となる.
疾患の制御には禁煙が重要であるのは言うまでもないが,日本の喫煙率は先進国のなかでは高い群に含まれ,成人男性の3人に1人,女性の10人に1人が習慣的な喫煙者である.したがって疾患の早期発見,早期治療が重要となる.肺癌に関しては,日本では胸部X線写真(高危険群では喀痰細胞診併用)を用いた肺癌検診が推奨されているが,近年,米国で肺癌高危険群(55歳から75歳までの喫煙者)において低線量CT検診の有用性が証明されたことから,今後日本でも普及していくことが予想される.一方,COPDについては,現時点で早期診断は困難であるが,今後は機能診断に加え,画像診断やバイオマーカーを用いた早期診断方法の検討が最重要課題となるであろう.
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