Japanese
English
綜説
衛生仮説再考
A Rethinking of Hygiene Hypothesis
丸岡 秀一郎
1
Shuichiro Maruoka
1
1日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野
1Department of Respiratory Medicine, Nihon University School of Medicine
pp.165-170
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102409
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はじめに
気管支喘息は,アレルギー性気道炎症,気道過敏性亢進,粘液過剰産生などにより可逆性の気道閉塞を来す疾患で,遺伝的要因と環境要因が相まって自然免疫および獲得免疫反応に影響を与え,その病態を形成していると考えられている.近年のゲノムワイド関連解析により様々な疾患感受性遺伝子が同定され1),気管支喘息の遺伝的「体質」が,解析されている.しかし,現時点では疾患感受性遺伝子として同定されたものは,疾患発症に対する寄与度が比較的小さいものが多く,遺伝率も低い.遺伝的要因だけでは気管支喘息の発症を説明することは困難である.さらに,遺伝子の暗号を変えることなく環境要因が遺伝子発現を制御しうるエピジェネティックなメカニズムも報告されており,気管支喘息の発症機序に関わる環境要因の比重は大きい.特に免疫システム構築にとって重要な乳幼児期の環境要因(ハウスダスト,花粉,細菌感染,ウイルス感染,公害,たばこ,ストレスなど)曝露は,気管支喘息の病態形成に非常に重要である.疫学研究結果から,乳幼児期の感染頻度とアレルギー疾患の発症との関連を提唱したのが,「衛生仮説(hygiene hypothesis)」である2).本稿では,気管支喘息の発症機序を中心に,「衛生仮説」という疫学理論を,最新の知見を踏まえて再考してみたい.
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