Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
末梢動脈疾患(peripheral artery disease;PAD)が注目されてきている.その大きな理由は,PADが単に下肢によく見られる動脈硬化疾患というだけでなく,PADは全身に起こるアテローム血栓症(atherothrombosis;ATIS)の一病形として見直されているからである.PAD診断の決め手となるABI(足関節上腕血圧比)を測定することによって,脳血管障害や冠動脈疾患などの心血管イベントを未然に防ごうという活動(take ABI)も広まり始めている.
しかし,実際の臨床現場では臓器別診療が主体であり,脳血管障害(CVD)は脳外科や神経内科,狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患(CAD)は循環器内科,PADは血管外科というふうに棲み分けられ,全身性に起こるATISという概念をもって診療されることは少ない.心筋梗塞・狭心症や脳梗塞などの病名はほとんどの一般人にも知れ渡っているが,PADのことを知っている一般人は少ない.典型的な間欠性跛行があっても,多くは年のせいにされており,それを主訴に受診する人も少ない.PADに関する認知度の低さは一般人だけでなく,医師においても同様である.診療で胸痛,息切れや動悸のことを患者に訊ねても,歩いて足が痛くなるかと訊ねることは,循環器科医でさえ少ない.専門にかかわらず狭心症を疑わせる症状を聞けば,循環器科を紹介するし,多くの内科医は抗血小板薬やスタチンを当然のように処方する.しかし,PADでは重症下肢虚血でもない限り,専門医への紹介は少ない.米国栄養調査報告でも,PADと診断がついている患者では,ガイドライン通りに抗血小板薬,スタチンやRA系降圧薬が処方されることは,CVDやCADと比べて明らかに少ない.認知度に加えて処方率の低さが,PADがCADやCVDと比較して予後が不良である原因となっている.すなわち,PADは洋の東西を問わず適切に受診,診断・治療・管理が十分になされていないのが現状である.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.