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はじめに
心臓突然死は心不全死とならんで心疾患患者の主要な死因であり,その発生を未然に防ぐことは生命予後の改善にきわめて重要となる.植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillators;ICD)は心疾患の種類や一次予防,二次予防にかかわらず,生命予後を改善する最も有効な治療法の一つである.わが国では1996年に保険償還されて以来,ICD本体の小型軽量化やデュアルチャンバー型の開発などにより,植込み手技や術後管理が容易となり,現在,ICDは致死的不整脈の治療戦略上,必要不可欠な治療法として確立している.
一方,心不全患者においては心室内伝導障害,心房心室間同期不全,室内同期不全,心室間同期不全を生じやすく,これらを改善するのが両室ペーシングによる心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy;CRT)である.CRTは心収縮能が低下し,心臓の同期不全を伴う中等症以上の慢性心不全患者において,心不全悪化を防止するのみならずその生命予後を改善すると言われている1).重症心不全における死亡原因はポンプ機能の低下によるものが多いが,軽度~中等度の心不全患者の半数以上は心臓突然死であるといわれており2),心不全患者においても致死的不整脈の管理が必要となる.そこで,近年では除細動機能を併せもった両心室ペーシング機能付きICD(CRT-defibrillator;CRT-D)が開発され,心不全に伴う致死的不整脈合併例の治療法として期待されている.ICDやCRT植込み患者に対する治療の最大の目的は,致死的不整脈の予防のみならず,患者の心機能や生命予後の改善,QOLの向上を図ることである.
従来,心機能が低い慢性心不全患者は運動に対するリスクが高いという理由から,その適応から除外されてきた.しかし,1980年代以降より慢性心不全に対する運動療法の有効性が相次いで報告され,近年ではその生理学的機序ならびに安全性,QOLの向上や生命予後の改善,医療経済的効果についても明らかにされている3).このような運動の多面的効果を考えあわせると,ICDやCRT植込み患者においてもQOLの向上や心機能,生命予後の改善のため,積極的に運動療法に取り組む必要があると考えられる.今回,ICDとCRT植込み患者に対する運動療法の効果や安全性,運動許容条件について,近年の研究結果も含めて概説する.
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