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はじめに
2005年にAHA/ACCの慢性心不全治療ガイドラインが改定され,これまでのNYHA分類からステージ分類へ変更された.そこではステージAにおけるリスクコントロールというごく初期からの介入の側面も重視しつつ,近年の重症心不全に対する注目度を反映してステージDという分類が新たに設けられた.1980年代後半以来,収縮不全に対してエビデンスを集積してきた治療はその多くがステージCまでの標準治療として記載された一方,ステージDはこれら既存のエビデンスを有する内科的治療(心臓再同期療法を含む)に対するnonresponderという位置付けである.したがって,現時点ではステージDの心不全に対してエビデンスを有する治療は補助人工心臓(VAD)と心臓移植しかないことになる1).2010年7月来改正臓器移植法が施行され,年間40症例弱の心臓移植が行われるようになったが,日本臓器移植ネットワークへの登録患者数は増加傾向であるとともに,後述するようなVAD術後の生存率向上もあいまって,これまで900日前後とただでさえ極めて長期であった移植までの待機日数が今後とも短縮される見込みは乏しく,むしろ延長するのではないかとさえ思われる.このように脳死ドナーが限られたわが国において心臓移植は眼前の患者の治療という意味では全く無力というほかはなく,VADのみが重症心不全に対する現実的な治療オプションというのが現状である.東大病院心臓移植適応委員会において移植適応とされた症例においてカテコラミン持続点滴を要するStatus 1の患者の2年後VAD非装着生存率が22%と著しく低いのはもとより,カテコラミン非依存性で適応委員会時点では外来通院可能であったStatus 2の患者においても2年のVAD非装着生存率は60%と決して楽観できない(図1).すなわち,わが国における標準的な移植待機日数が最低2年以上であることを考えればVADという治療オプションなしに移植までブリッジすることは極めて困難であるということがわかる.
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