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はじめに
身体を動かし体力を維持することは老若男女を問わず健康維持のために不可欠であり,動かないでいると廃用性の筋萎縮や骨の脆弱化,静脈血栓の発生や心血管疾患のリスクが増加するなどの様々な問題が生じる1,2).よって,労作時に生じる様々な症状を避けるために体動を制限しがちな呼吸器疾患患者においてもできるだけ体を動かすことが必要であり,適切な運動指導が求められる.そのためには,詳細な病歴の聴取や理学的所見などの安静時の基本的な情報の収集が大切である.しかし,それらを総合してもまだ症状の原因や程度が十分説明できないときに,労作時の状況を再現できる運動負荷検査の施行が検討される.運動負荷検査は,運動に伴う呼吸循環反応を直接観察できるうえに,呼吸困難以外の種々の運動制限因子を含めた運動能力(運動耐容能)そのものを包括的に評価することが可能である.
運動負荷検査には,トレッドミルやエルゴメーターを用いて,運動中の呼気ガスを収集し酸素摂取量や分時換気量などを同時に測定する心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test;CPET)があり,2003年にAmerican Thoracic Society(ATS)/American College of Chest Physician(ACCP)3)から,2007年にEuropean Respiratory Society(ERS)4)からガイドラインが出されている.本稿の前半では,実地臨床の場でCPETが行われる目的や適応,各パラメーターの基本的な意味を説明したうえで,代表的な呼吸器疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺線維症における検査結果の特徴を解説する.一方,特別な器具を必要としない簡易的な歩行試験を使うことでも,患者の運動能力に関する日常生活に即した重要な情報を得ることができるため近年重用されている.本稿の後半では6分間歩行試験(6MWT)の方法や検査結果の捉え方について解説する.
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