Japanese
English
綜説
新しい抗凝固薬の臨床応用
Clinical Use of the New Anticoagulants
堀 正二
1
Masatsugu Hori
1
1大阪府立成人病センター
1Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases
pp.299-308
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101914
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はじめに
血栓塞栓症は血流途絶の原因となり灌流臓器の組織虚血を惹起するため,循環器疾患の最大原因の一つとなっている.心筋梗塞,脳梗塞,肺血栓塞栓症,末梢血管疾患はいずれも血栓塞栓が主な原因である.しかし,その治療や予防を考えるとき,その病態主座が動脈系か静脈系かによって治療戦略が異なることに留意する必要がある.前者が,血小板凝集が中心となる血栓形成が生じるのに対し,後者はフィブリン形成が主体となるため,その治療や予防には主として各々抗血小板薬および抗凝固薬が用いられる.抗血小板薬の代表がアスピリンとチエノピリジン誘導体であり,抗凝固薬の代表がワルファリンである.アスピリンは,抗炎症薬として古くから使用されてきた薬剤であり,ワルファリンも50年以上の歴史を有している.ワルファリンは,主として静脈系の血栓形成抑制に用いられてきたが,種々の問題点があり,もっと使いやすい有効な薬剤の開発が待たれていた.近年,この要請に応えて開発されたのが,トロンビン阻害薬およびXa因子阻害薬である.これらの薬剤は,開発戦略から,下肢整形外科領域における術後の静脈性血栓塞栓症(VTE)の予防・治療および心房細動患者における心原性脳塞栓症(脳梗塞)の予防を目的に開発された.最近,臨床使用が承認されたため,本稿では特にトロンビン阻害薬(ダビガトラン)の心房細動患者に対する投与について,開発の背景,開発の経緯,臨床使用の注意点を中心に述べ,さらに現在開発中の薬剤についても概説する.
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