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特集 肺高血圧症の新しい展開
難治性特発性肺動脈性肺高血圧症に対するイマチニブによる治療
Treatment with Imatinib for Refractory IPAH
中村 一文
1
,
赤木 達
1
Kazufumi Nakamura
1
,
Satoshi Akagi
1
1岡山大学病院循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, Okayama University Hospital
pp.27-31
発行日 2012年1月15日
Published Date 2012/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101864
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はじめに
特発性肺動脈性肺高血圧症(idiopathic pulmonary arterial hypertension;IPAH)は血管収縮,血管リモデリング,血栓形成などにより肺動脈内腔の狭窄・閉塞を来し,肺血管抵抗の増大をもたらす疾患である.重症・難治例では著明な内膜や中膜の肥厚により激しい血管リモデリングが生じている(図1)1).肺動脈の内皮細胞や平滑筋細胞の異常増殖がその本態と考えられている.肺動脈平滑筋細胞はIPAHと正常では異なる性質を有しており,なかでも血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor;PDGF)刺激による増殖が正常対照者のものより亢進している(図2)2,3).PAH患者の肺動脈ではPDGFとPDGF受容体(PDGF receptor;PDGFR)の発現が亢進しており,このPDGFによる過剰な増殖を抑制することが血管リモデリングの解除につながると考えられている4,5).
イマチニブは,慢性骨髄性白血病で染色体異常により生じる異常蛋白であるBcr-Ablと消化管間質腫瘍で高発現するc-kitのリン酸化を抑制し,さらにPDGF受容体のリン酸化も抑制するPDGF受容体アンタゴニストである.2005年に動物を用いた基礎実験(ラットのモノクロタリンモデルとマウスの低酸素モデル)ならびに臨床使用例においてPAHに対する有効性が報告され4,6),以降臨床試験が進行中である.本稿では現在までの基礎実験ならびに臨床試験のデータを紹介する.
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