Japanese
English
特集 肺高血圧症治療の現状と展望
肺動脈性肺高血圧症
Pulmonary Arterial Hypertension
京谷 晋吾
1
Shingo Kyotani
1
1国立循環器病センター心臓血管内科
1Division of Cardiology, Department of Medicine, National Cardiovascular Center
pp.981-985
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101122
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はじめに
肺高血圧症は肺動脈圧が異常に増加した病態と定義され,生理学的に肺動脈性(前毛細管性)と肺静脈性(後毛細管性)に分類される.後者は肺静脈そのものの循環障害であったり,僧帽弁狭窄症のような左心系弁膜疾患や心筋症のような左室の流入障害による左室拡張期圧の上昇に伴う病態で,下流(肺静脈)の血圧上昇に伴って上流(肺動脈)の血圧が上昇してしまう.それに対して前者は肺動脈そのものの循環障害で,肺動脈の狭窄閉塞による血管抵抗の増加が肺動脈圧亢進の原因となっている病態である.
肺動脈性肺高血圧症は肺動脈の器質的な狭窄閉塞を来し,生理学的な肺動脈性肺高血圧を生じているような疾患の一群である.膠原病のような疾病に合併して生じる続発性あるいは二次性肺高血圧症と,原因が明らかでない特発性肺動脈性肺高血圧症(原発性肺高血圧症)があり,いずれにおいても自然歴における生命予後は極めて不良である.従来,難治性で,短期間に死に至る重篤な疾患とされてきたが,約20年前に生体内物質であるプロスタサイクリンを生合成し製剤化されたエポプロステノールが使用できるようになり,著明な予後改善がみられた.
こうした経緯や状況から肺高血圧症についての研究は盛んになり,多くの知見は指数関数的に積み上がった.しかし,そのように種々の知見が増えることにより,未解決の疑問が多く浮かび上がってきている.今回はそのなかで肺高血圧症治療の歴史的経緯を回顧し,血管壁細胞増殖抑制の意義について述べる.
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