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はじめに
分子メージングとは,細胞,分子レベルで進行している生理的,病態生理学的変化を可視化する画像診断法である.核医学画像は従来より細胞レベルでの特定の生理的変化を画像化しており,本質的にはすべて分子イメージングの範疇に入るものである.近年,他の画像診断でも分子イメージングが模索されており,MRI(magnetic resonance imaging),optical imaging(蛍光イメージング,生体発光イメージング),CT,超音波法などが挙げられる.いずれの方法も特定のトレーサーにシグナルを発する物質を結合させ画像化するものである.核医学法の利点はPET(positron emission tomography)やSPECT(single photon emission computed tomography)に用いるRI標識トレーサーの投与量が極微量であることである.このためにトレーサーの生理活性による副作用がない.また,受容体発現や活性,血流,代謝,特定の蛋白の発現,遺伝子発現,細胞死,等々を高感度かつ特異的に画像化できる.欠点としては空間解像度の低さがあるが,これはCTとの融合画像にてある程度カバーできる.
心疾患の診断は形態的,機能的変化に基づいてなされてきたが,分子イメージングは,それに先立って起こる特定の病態生理の変化,あるいはその原因となる病的プロセスをターゲットにして異常を早期に検出することを目的としている.また,疾患の成立メカニズムの研究に基づいた治療法の進化特殊化に伴い,分子標的薬剤や遺伝子治療などが治療のターゲットにしている変化を特異的に検出できるメリットがある.すなわち,従来のように患者予後や,機能の変化をみるのみでは感度が低く,治療のターゲットとなる生物学的なエンドポイントを設定し,意図した病態生理的な効果が得られているかを評価することが必要であり,分子イメージングが有用となってくる.また,予後の評価に対しても特定の病理学的プロセスを検出することにより,リスクの高い特定の患者群を検出できる可能性が期待される.
心臓核医学においては現在,血流(SPECT製剤として201Tl,99mTc-MIBI,99mTc-tetrofosmin,PET用血流製剤として82Rb,13N-ammonia,15O-waterなど),脂肪酸代謝(123I-BMIPPや11C-palmitate),糖代謝(18F-FDG),酸素代謝(11C-acetate),交感神経機能(123I-MIBG,11C-meta-hydroxyephedrine;HED)の評価が可能である.これらの組み合わせにより,かなり詳細な病態生理学的変化の評価が可能となってきたが,さらにより本質的な病態変化の画像化を目的としたトレーサーの検討が進んでいる.そのなかの一つにテネイシンC(TenC)の発現を画像化する目的で開発されたRI標識抗TenC抗体がある.
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