Japanese
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特集 テネイシンCと心臓・血管病変
動脈硬化とテネイシンC
Atherosclerosis and Tenascin C
山本 希誉仁
1
,
小野田 幸治
2
Kiyohito Yamamoto
1
,
Koji Onoda
2
1三重大学胸部心臓血管外科
2福西胃腸科外科
1Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Mie University
2Fukunishi Gastroenterological and Surgical Clinic
pp.1089-1097
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101821
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はじめに
動脈硬化における新生内膜は血管平滑筋細胞(VSMC)の異常な遊走と増殖とともに細胞外マトリックス(ECM)蛋白の著明な沈着と定義される.そこに至る組織構築過程は,細胞の増殖,遊走,それに必要なECM蛋白の量や種類の変化,さらに,そのECM蛋白を調節するメタロプロテアーゼの作用などによって複雑に制御されている.近年,ECM蛋白による細胞接着制御として,創傷治癒過程や癌の発生・進展などの種々の組織再構築過程で注目されているECM蛋白がテネイシンC(TNC)である.このTNCが動脈硬化病変の活動期の部位やPTCA後の再狭窄部に最も初期段階に発現している点が,動脈硬化病変の進展機序の解明のkey moleculeとして注目されている.
一方,心臓血管外科領域において,吻合部新生内膜形成は非常に重要な問題である.冠動脈バイパス術や末梢血管外科では動静脈グラフトを使用するが,グラフト吻合部の新生内膜形成,あるいは動脈硬化の進行がグラフト不全を引き起こす.新生内膜形成はVSMCが内膜に遊走,増殖することと新生内膜でのECMの沈着が原因といわれ,基本的に動脈硬化進展過程やPTCA後の血管内皮障害における内膜肥厚形成過程と同じ機序と考えられている.
本稿では,動脈硬化病変進展におけるTNCの関与とその分子機能,血管吻合部狭窄病変の進展における新生内膜形成とTNCの発現とその制御について当教室での研究を中心に概説する.
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