Japanese
English
特集 慢性炎症と循環器疾患
慢性炎症調節因子アンジオポエチン様因子2と心血管病
Roles of Angiopoietin-like Protein 2 in Cardiovascular Disease
堀尾 英治
1
,
田爪 宏和
1
,
尾池 雄一
1
Eiji Horio
1
,
Hirokazu Tazume
1
,
Yuichi Oike
1
1熊本大学大学院生命科学研究部分子遺伝学
1Department of Molecular Genetics, Graduate School of Medical Sciences, Kumamoto University
pp.905-910
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101782
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はじめに
近年,わが国では生活様式の欧米化に伴い,肥満,脂質代謝異常,耐糖能障害などメタボリックシンドロームを構成する代謝性疾患が大幅に増加し,心血管病との関連が注目されている.2006年の国民健康・栄養調査によると,40~74歳ではメタボリックシンドロームの強く疑われる者の比率は男性24.4%,女性12.1%,予備軍と考えられる者の比率は男性27.1%,女性8.2%であり,実に40~74歳男性の2人に1人,女性の5人に1人にものぼる1).
メタボリックシンドロームの病態は,インスリン抵抗性とその病態の上流にある腹部肥満,特に腹腔内の内臓脂肪蓄積が共通の基盤にあるのが特徴である.肥満に伴い,脂肪組織に浸潤するマクロファージが増加し,マクロファージから分泌されるサイトカインや脂肪細胞から分泌されるアディポカインの作用により,肥満においては脂肪組織の慢性炎症が生じていると考えられている2,3).また,Rossによる血管障害説4,5)以降,動脈硬化症の発症・進展にも,慢性炎症の関与が注目されている.
近年のわれわれの研究では,組織でのアンジオポエチン様因子2(Angiopoietin-like Protein 2;Angptl 2)の持続的発現が慢性炎症の原因となることを明らかにしている.本稿では,メタボリックシンドロームや血管内皮機能障害,動脈硬化,大動脈瘤におけるAngptl 2の役割について概説する.
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