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はじめに
ここ数十年で日本人の食生活は大きく変化した.1960年頃までの日本人の食事は,米を主食として魚介類,イモや野菜などで構成されていた.しかしその後の食生活の欧米化に伴い,乳製品や動物の肉,菓子類から動物性および植物性脂肪を摂取する機会が多くなった.実際,厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html;平成14年までは「国民栄養調査」)において脂肪の摂取量の変化を追うと,終戦間もない1950年には1日18gだった数値が1960年には25gとなり,1995年には60gのピークに達している.最新の2008年のデータによると脂肪摂取量は52gまで減ってはいるものの,それでも1950年と比べて約3倍の量である.確かに,この「食の欧米化」によって栄養状態が良くなり,結核をはじめとした感染症や脳卒中の減少がもたらされ,日本人の平均寿命が伸びたと考える人は多い.しかし,脂肪摂取量が過度に高くなるとエネルギー摂取量が大きくなることにつながり,肥満やメタボリックシンドロームを引き起こすことも事実である.この状態が厄介なのは,慢性炎症が病態基盤となっている心血管疾患や糖尿病のリスクを増加させるからである.この慢性炎症惹起メカニズムの一部は,過剰に摂取した脂肪に由来する高い血中濃度の「脂肪酸」が関与していると考えられている.また最近の脂肪酸の研究では,低酸素や喫煙によって血中濃度を増すことや,全身性に慢性炎症を惹起することで心血管疾患や糖尿病のみならず呼吸器疾患にも関わる可能性が指摘されている1).
本稿では慢性炎症を惹起するメディエーターとしての脂肪酸が生体に作用する機序をもとに,脂肪酸の呼吸器疾患の増悪化への関与について論議する.
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