巻頭言
慢性心不全治療の進歩
竹石 恭知
1
1福島県立医科大学医学部循環器・血液内科学講座
pp.439
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101699
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慢性心不全の症例が増加している.心不全は高齢者で罹患率が高く,未曾有の高齢化社会を迎えつつあるわが国では,今後さらに増加すると考えられている.近年,新しい治療薬が次々と開発され臨床で使用できるようになった.多くの大規模臨床試験のエビデンスを踏まえて,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,β遮断薬をはじめとする標準的薬物療法がガイドラインで明示された.また,両心室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT),非侵襲的陽圧換気療法,心臓リハビリテーションといった非薬物療法も普及してきた.しかし,心不全は未だ予後の悪い疾患であり,新しい治療法の開発が希求されている.
心不全を発症すると,治療により軽快しても増悪による入退院を繰り返すことが多いため,再増悪をさせない治療が大切である.B型ナトリウム利尿ペプチドをはじめとするバイオマーカーが診療の指標として利用されている.また,除細動機能付CRT(CRTD)デバイスを用いた在宅モニタリングを活用し,胸郭内インピーダンスをはじめとする様々な生体情報を遠隔モニターし,再入院を回避する試みが行われている.一方,現在では息切れや呼吸困難といった症状が出現してから治療が開始されることがほとんどであるが,無症状であっても心筋梗塞の既往,心臓弁膜症がある将来の心不全発症リスクが高い症例に早期から介入し,また高血圧症,心肥大,肥満,メタボリック症候群などに生活習慣を是正し早期からRAA系抑制薬やβ遮断薬を投与し,心不全の発症を予防することの重要性が認識されている.
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