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はじめに
近年,冠動脈疾患(coronary artery disease;CAD)の治療の選択肢である薬物療法,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI),そして冠動脈バイパス術(coronary artery bypass graft surgery;CABG)は急激に進歩している.薬物療法においてはスタチンやレニン-アンジオテンシン系抑制薬の登場で生命予後そのものが飛躍的に改善された.PCIもステント,とりわけ薬剤溶出ステント(drug eluting stent;DES)やローターブレータをはじめとするデバイスの進歩と技術の向上によりさらに安全に施行可能となり,これまで適応外と考えられていた3枝病変や左主幹部病変(left main trunk;LMT)に対しても施行されるようになり,PCIの欠点であった再狭窄も克服されつつある.CABGにおいても動脈グラフトの使用やオフポンプCABGなどの低侵襲手術の普及などで安定した成績が出されるようになった.したがって,2000年以前と比較しどの治療法も大きく成績を向上させ,予後を革新的に向上させていると言わざるを得ない.
最近,この安定CADに対するわが国のガイドライン策定に当たって,初期治療戦略としてPCIを先行させるべきか,それともCABGを初期から選択するのかといった議論が巻き起こっている.当然のことながら,誤解されやすいのが,PCIもCABGもすべて十分な薬物療法を施されたうえでの治療法であり,初期治療法をPCIにするかCABGを施行するかの選択に過ぎないことである.そもそも初期に薬物療法を選択したとしても,より重症な高度狭窄症例に対しては即座にPCIなどのインターベンションが施行される.PCIも数多く繰り返す再狭窄病変などに対して最終的にはCABGを選択せざるを得ない症例もある.CABGもバイパスの閉塞や不十分な血行再建,バイパス遠位の新規病変の出現やバイパス枝以外の病変の出現に対しては,大多数の症例は再度CABGが選択されるわけではなく,PCIが選択されるという相互の関係で予後を改善させている現実がある.
本稿では,循環器内科医の立場から主にPCI,CABGのエビデンスを検証し,循環器内科医および心臓血管外科医,そして患者側のそれぞれの立場や,現実的にどのようにPCIとCABGの治療選択を考えたらよいのか概説する.
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