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はじめに
経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)の臨床での歴史は,世界的にみると既に30年以上となり,同治療法は成熟し完成された治療法になったといえる.一方の冠動脈バイパス手術(coronary artery bypass grafting;CABG)は,さらに古くから確立された治療法であった.
これまでの経緯をみると,より低侵襲の冠血行再建法であるPCIが,その手技や機器の進歩に伴って,先行するCABGが標準治療とされていた領域へ適応を拡大してきたということができる.現在では,1枝疾患のほとんどと2枝疾患の多くはPCIで治療されているし,percutaneous transluminal coronary angioplasty(PTCA)と呼ばれていたバルーンで拡張するだけの時代には禁忌とされていたような複雑病変の多くが,日本全国の数多くの施設でPCIにより治療されている.しかしながら,両治療法には,それぞれ固有の特徴があり,左冠動脈主幹部から左前下行枝と回旋枝の分岐部にまたがる病変,CABGのリスクが高くない糖尿病患者の多枝病変など,現在でもCABGが優先的に選択されることが標準的治療と考えられている病変や症例も少なくない.こうした状況下で,循環器内科と心臓血管外科を併設した一般的な施設の多くで,PCIとCABGの一方に選択が偏らない症例は,左冠動脈主幹部病変を合併しない多枝疾患例であろう.
本稿では,そのような症例でのPCIとCABGの成績に関して,わが国の実地臨床での成績であるCREDO-Kyotoレジストリーの結果を中心に話を進めたい.CREDO-Kyotoレジストリーの大きな目的はPCIとCABGとの治療後の予後の比較にあったが,それのみではなく,冠血行再建術を要する日本人冠動脈疾患患者の特徴や予後の規定因子,薬物治療の評価なども,同研究の重要な目的であった.これらの点についても,同研究の結果を一部紹介し,その意義を考察したい.
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