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特集 呼吸器疾患と分子標的治療
肺循環障害に対する分子標的治療
Molecular Target Therapies for Pulmonary Circulatory Disorders
田坂 定智
1
Sadatomo Tasaka
1
1慶應義塾大学医学部呼吸器内科
1Division of Pulmonary Medicine, Department of Medicine, Keio University School of Medicine
pp.1011-1017
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101558
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はじめに
肺循環障害には肺動脈高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)や肺血栓塞栓症,肺水腫など多様な病態が含まれるが,なかでもPAHは無治療での3年生存率が約40%と予後不良な疾患である.PAHは原発性ないし種々の疾患に伴って肺動脈圧が上昇する肺血管疾患であるが,近年の研究から発症機序・病態に関して分子レベルでの理解が進んでいる.PAHではBMPR2遺伝子異常などに伴う肺動脈内皮細胞のアポトーシスに端を発して,アポトーシス抵抗性の肺動脈内皮・平滑筋細胞が誘導され,その異常増殖が肺動脈内腔の狭窄・閉塞(リモデリング)につながる.肺血管の収縮・弛緩やリモデリングには様々な血管作動性物質や成長因子などが複雑に関与しており,それらを標的とした新たな治療薬が試みられ,一部は実用化されている(図1)1).
本稿では,PAHに対する分子標的治療の現状と今後の可能性について概説する.
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