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綜説
好中球エラスターゼ阻害薬(ONO-5046;sivelestat)による急性肺傷害の治療
ONO-5046 (sivelestat), a Neutrophil Elastase Inhibitor, as a Therapeutic Modality for Acute Lung Injury
田坂 定智
1
,
石坂 彰敏
2
Sadatomo Tasaka
1
,
Akitoshi Ishizaka
2
1慶應義塾大学医学部内科
2東京電力病院臨床検査科
1Department of Medicine, School of Medicine, Keio University
2Department of Laboratory Medicine, Tokyo Electric Company Hospital
pp.1019-1025
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100733
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はじめに
急性肺傷害(acute lung injury;ALI)や急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は敗血症,重症肺炎,外傷などの種々の基礎病態に引き続いて惹起され,肺微小血管の広範な傷害による透過性亢進型の肺水腫像を呈する病態である1).ALI/ARDSの生存率には近年改善がみられるものの,それは人工換気や補助療法(supportive therapy)の進歩によるところが大きいと考えられており,ALI/ARDSの特異的治療法は確立されていない2,3).その発症機序についての検討から,急性肺傷害は肺内に過剰に集積した好中球による組織破壊が主たる病態であり,好中球から放出されるエラスターゼ(neutrophil elastase;NE)や活性酸素などが組織破壊の中心的役割を果たしていると考えられている1).好中球による組織破壊を防止する手段として,①好中球の肺への集積の抑制,②好中球由来の組織傷害物質の活性阻害,という2つの方法が考えられる.前者としては抗接着分子療法や抗サイトカイン療法などが試みられ,初期の小規模な臨床試験では一部有望な成績も得られたが,より大規模な試験で明らかな臨床効果が証明されたものはない3).後者としては活性酸素に対するアンチオキシダントや蛋白融解酵素(プロテアーゼ)に対する各種阻害剤がある.
本稿ではNEの性質および病態への関与,さらに近年臨床応用が可能になったNE阻害薬ONO-5046(sivelestat)の特性,治療成績について概説する.
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