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特集 呼吸器疾患治療の標的分子
ARDS治療の標的分子
Current Understanding of the Molecular Targeted Therapy for Acute Respiratory Distress Syndrome
田坂 定智
1
Sadatomo Tasaka
1
1慶應義塾大学医学部呼吸器内科
1Division of Pulmonary Medicine, Keio University School of Medicine
pp.309-314
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205676
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はじめに
急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は,敗血症や重症肺炎,胃内容物の誤嚥などの種々の基礎疾患や外傷に続発して発症し,高度な炎症に伴って肺胞隔壁(血管内皮,肺胞上皮)の透過性が亢進することによる肺水腫(非心原性肺水腫)を特徴とする1).現在のARDSの定義(Berlin definition)では,①急性発症,②低酸素血症,③胸部画像上の両側性陰影,④左心不全や過剰輸液負荷のみで病態を説明できない,の4項目を満たす場合にARDSと診断され,酸素化指数(PaO2/FiO2)により重症度が分けられる2).
ARDSの病態には炎症性メディエーターなど数多くの分子が関与するため,こうした分子を標的とした治療法が試みられてきたが,大規模な無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で生命予後の改善効果が証明されたものはない.ARDS患者の死亡率は徐々に低下しているが,これは呼吸管理をはじめとする患者管理の進歩によるところが大きいと考えられている.本稿ではARDSに対する分子標的治療に関する知見を整理し,現在検討されている標的分子を紹介するとともに,今後の展望を考察することとする.
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