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特集 呼吸器疾患と分子標的治療
肺癌に対する分子標的治療
Molecular Targeting Therapy to Non-small Cell Lung Cancer
萩原 弘一
1
Koichi Hagiwara
1
1埼玉医科大学呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Saitama Medical University
pp.1005-1010
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101557
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はじめに
国民衛生の動向2009年版によると,2007年の部位別悪性新生物死亡数での肺癌死亡数は65,608名,男性・女性双方で,わが国の癌死因トップとなった.全死亡数の6%,すなわち日本国民の17人に1名が肺癌で亡くなっている.
肺癌の特徴は,罹患数対死亡数0.75という予後の悪さにある.発見された時点で2/3の患者がすでに領域リンパ節以上の転移を有する1).さらに,Ⅰa期,Ⅰb期という早期に発見され手術した症例でも,5年生存率が79.2%,60.1%(病理病期に基づいた数字)と他臓器癌と比較して低い(図1)2).Ⅰa期とⅠb期に20%近い差がみられることは,手術可能な肺癌でも早期から不顕性の遠隔転移を来していることを示している.早期発見,早期治療という単純な戦略では,肺癌の治療成績を著明に向上させることは難しい.
肺癌はタバコ病と言われる.これは一面の真実だが,一面誤りでもある.肺癌患者のうち喫煙が原因と考えられる患者の割合は,男性で67~72%,女性で15~16%とされている3).喫煙を完全に根絶するのが肺癌対策の第一歩だが,完全に根絶しても肺癌の半数は残る.肺癌を解決していくためには,禁煙の励行とともに,喫煙と関連しない肺癌に対する治療戦略を立てて行くことが不可欠である.
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