Topics Respiration & Circulation
接着分子と肺循環
鈴木 幸男
1
1北里研究所病院内科
pp.767-768
発行日 1996年7月15日
Published Date 1996/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901296
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■最近の動向 細胞接着は生体内における様々な細胞相互作用に不可欠の現象である.接着分子は細胞接着の際の接着剤として機能するだけではなく,細胞接着を介して細胞外環境の変化を認識し,その情報を細胞内に伝達する機能も有する.それゆえ接着分子は細胞の接着以外に分化,増殖,形態形成,免疫,血液凝固,癌の転移,炎症,組織修復など広範囲におよぶ生物学的現象を仲介し,生体の維持に重要な役割を担っている.
一方,肺は他臓器に比べて解剖学的に広大な毛細血管網を有し,かつ白血球のmarginated poolとして最も重要な臓器である.このため肺においては接着分子を介する白血球と血管内皮細胞の相互作用がより重要であると考えられる.さらに生体顕微鏡による観察以後,肺微小循環系と体微小循環系における白血球—血管内皮細胞間の相互作用の違いが次第に明らかになってきた.たとえば,白皿球の接着や遊走(margination)は体微小循環系では後毛細血管細静脈(postcapillary venule)で生じるとされるが,肺微小循環系では主に毛細血管で生じる.このように微小循環中の白血球動態や接着分子の発現様式には臓器特異性があり,体微小循環系での知見を肺微小循環系にそのまま当てはめることは危険である.
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