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最近深刻な医師不足が社会問題化しており,特に産婦人科,小児科などの医師が不足していると言われています.しかしながら,医師不足はこのような診療科にとどまらず,第一線の診療現場では呼吸器診療に携わる医師の不足が深刻となっています.呼吸器疾患を有する患者数は消化器疾患,循環器疾患と並んで多いと思われますが,近年の急速な高齢化に伴い,肺癌,COPD,肺炎などの患者は増加の一途をたどっています.一方,日本専門医制度評価・認定機構の報告では,2009年度における日本消化器病学会の会員数は30,000人を超え,専門医が16,048名,日本循環器病学会の会員数も約22,000人,専門医11,479名でしたが,日本呼吸器学会では会員数約10,000人,専門医4,081名と2つの診療科に比し極めて少数にとどまっています.
筆者が在住する山口県では,呼吸器を担当する医師の不足がさらに厳しいように感じています.県内で呼吸器科を開設している総合病院は非常に少なく,中規模以上の病院で呼吸器の専門医が常駐している病院はわずか数病院のみにとどまっており,そのうえ500床程度の病院で女性の呼吸器科医が1人だけという病院もあります.これまで県内の多くの病院では,それぞれ個別に呼吸器を専門とする大学医局にお願いして,呼吸器科医の派遣を受けていたようですが,医師不足の影響をもろに受けて,呼吸器科医の大学への引きあげ,高齢の医師の退職などの結果,残された呼吸器科医の負担の増大による疲弊がさらなる退職につながり,診療科の廃止が相次いで,現在のような厳しい状況になっているようです.木村らによる「わが国における呼吸器診療の現状と問題点」という報告1)によれば,山口県における内科10床あたりの内科医数は0.73と全国平均の0.83に比べてやや少ない程度ですが,内科医のうちの呼吸器科医の割合は0.049と全国平均の0.14の3分の1と全国最低であり,山口県では呼吸器科医が非常に不足していることを明確に示しています.
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