連載 リレーエッセイ 医療の現場から
ぼやきをぼやきで終わらせていいのでしょうか?
平 孝臣
1
1東京女子医科大学脳神経外科学講座
pp.861
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100102
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数年前までは学会などで他施設の医師達と飲み交わすと,手術の方法や学問的な議論で白熱し,夜が白むことが常であった.しかし最近では単にぼやきとしか言いようのない非建設的な話で終わってしまうことが少なくない.医療をとりまく状況はこの数年で大きく変化し,医療者にさまざまな義務や注意が課せられるようになった.このことは医療の質を上げるうえでも大切なことである.
しかし一方で,それにみあうだけの処遇が改善されていないばかりか,悪化しているといっても過言ではない.これがぼやきの原因である.
私どもの施設には毎日数多くの患者さんが紹介されてくる.その多くは他施設では手に負えない病状や,患者さん自身がよりよい施設や医師(と彼らが思う)を希望してという理由である.そこに働く者としては冥利につきることではある.しかしどんなに毎日診療に明け暮れ,平均をはるかに上回る数と内容の治療を行っても,自己の収入にはまったく反映されない.診療にインセンティブがないので,患者を診ずに論文のための研究を優先する者も出てくる.これが多くの大学病院勤務医の実感ではないだろうか.
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