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特集 喫煙の呼吸器・循環器に及ぼす影響―エビデンスに基づいて
喫煙の脳卒中発症・予後に及ぼす影響
The Influences of Smoking for Incidence and Prognosis of Stroke
末田 芳雅
1
,
大槻 俊輔
1
,
松本 昌泰
1
Yoshimasa Sueda
1
,
Toshiho Ohtsuki
1
,
Masayasu Matsumoto
1
1広島大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学
1Department of Clinical Neuroscience and Therapeutics, Hiroshima University Graduate School of Biomedical Sciences
pp.1015-1022
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101345
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はじめに
喫煙と脳卒中発症の関連については,1989年に32カ国で行われた疫学的研究のメタ解析により既に報告されており,非喫煙者と比較した喫煙者の相対危険度は,全脳卒中で1.51(95%CI1.45~1.58),脳梗塞で1.92(95%CI1.71~2.16),脳出血で0.74(95%CI0.56~0.98),クモ膜下出血で2.93(95%CI2.48~3.46)という結果が得られている1).しかし,このメタ解析には,日本人のデータも含まれているものの1編のみであり,その後近年に至るまで,本邦での疫学的研究では喫煙と脳卒中発症・死亡との関連について一定の見解が得られていなかった.この数年間で喫煙と脳卒中各病型の発症や死亡との関連性,および禁煙による脳卒中発症の予防効果・死亡リスク軽減効果を示す多施設共同前向き疫学研究の報告が出始めてきた2~4).一方,能動喫煙のみならず,受動喫煙に関しても,すでに癌や虚血性心疾患発症の危険因子であることが示されており,本邦においても2003年に制定された「健康増進法」では,受動喫煙防止対策として,公共の施設においては受動喫煙を防止する措置を講ずるよう努力義務規定として明記された.受動喫煙と脳卒中発症に関しても,2008年に大規模疫学的データが米国より報告されており,受動喫煙は脳卒中発症の危険因子となることが示唆された3).
本稿では,これらの疫学的研究の結果を踏まえ,喫煙の脳卒中各病型に対する影響を概説し,さらに受動喫煙が脳卒中発症に及ぼす影響,禁煙・喫煙対策についても論じる.
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