Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)は,有害な粒子あるいはガスに対する肺の炎症反応と関連し,完全には可逆性ではない進行性の気流制限を特徴とする疾患である.米国では,1965年から1998年における冠動脈疾患や脳卒中といった各種疾患の死亡率は低下しているにもかかわらず,COPDは上昇の一途をたどっており1),WHOによるとCOPDは2020年には世界の死亡原因の第3位にまで上昇すると推定している.加えて,COPDは長期の喫煙が大きく影響する生活習慣病の一つであり,日本においては,欧州などと比べると禁煙対策が遅れているため,依然として喫煙率が高く今後も高齢化社会とともに,患者数は急速に増加するものと考えられている.
COPDは,世界中でその罹患率・死亡率が増加している疾患であるという認識が高まり,2001年にNHLBI/WHOによって,健康障害としてのCOPDの重要性を広く認識してもらい,国際間で統一してCOPDの予防・診断・治療に臨もうということでGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)が発表され2),世界におけるCOPDの大きな疾病負荷が明らかとなってきた.北米とヨーロッパの合計8カ国で2000~2001年にかけて行われた調査では,各国のCOPD有病率は5.7~8.6%という結果で,アジア太平洋領域12カ国では平均すると6.3%(3.5~6.7%)であったと報告されている.
日本では,1996年に発表された厚生省(現;厚生労働省)による統計報告によると,COPD患者数は約22万人余りと推定されている.しかし,2001年に発表された福地らの大規模疫学調査(Nippon COPD Epidemiology study;NICE study)では,18都道府県の異なる箇所において日本人の人口比率に基づいて無作為に選定された一般住民を対象に調査した結果,日本におけるCOPD患者数は約530万人と推定され,40歳以上の成人の有病率は8.5%であり,欧米での報告と同様の有病率を示した.さらに,COPDと診断された対象者の多くは軽症~中等症で,COPDと診断されていない者が90%を占めており,COPDは高い有病率にもかかわらず過小評価され,重症化するまで発見されず,適切な治療がなされていないと指摘している.
COPDの疫学調査では,罹患率,罹病率および死亡率は各国間だけでなく国内でも調査方法で異なり,1市町村を対象にした調査報告は少ない.このような背景から,長崎県では,今後増加すると予想されるCOPD患者を早期に発見し,適切な治療・医療に結びつけ,呼吸機能やADL,QOLの低下を防止するため,保健所が中心となってCOPD対策委員会を設け,疫学調査の方法を検討し,現在はその結果から呼吸リハビリテーションを含めたCOPDの病診連携の構築を目指しているので,その方法と実際について紹介する.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.