Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
急性増悪による影響
急性増悪は「安定期における通常の日内変動の範囲を超えた急激な自覚症状の発症・増悪のため治療内容の変更や新たな追加治療を要するもの」と定義されている1,2).慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)の急性増悪は感染,心不全などを契機に起こる(表1)3). 急性増悪に伴う症状としては,発熱,喀痰量の増加,食欲不振,呼吸困難感の増悪のほか,活動量の低下がみられる.COPD症例における低栄養,骨格筋異常が近年問題となっているが,急性増悪による安静・臥床にてさらに廃用が容易に進行する.急性増悪を脱した後もCOPD症例では呼吸困難感を中心とした呼吸器症状の悪化4),日常生活活動(activity of daily living;ADL)の活動量の低下5),生活の質(quality of life;QOL)の低下6),および生命予後への影響6,7)も報告されている.COPD急性増悪時のADL変化を調査した伊藤らの報告8)では,急性増悪前後のADLをBarthel Index(BI)にて評価したところ,入院前89.4±17.7点とほぼADLが自立していたにもかかわらず,急性増悪による入院時には64.7±25.9点へと低下を認めたと報告している(図1).さらに個々の症例をみていくと,入院後平均1.9日から排痰,離床目的で理学療法士が早期より介入していたにもかかわらず,ADLが入院前のレベルまで改善しなかった症例の割合は15%であった.入院前のレベルまで回復しなかった症例の特徴は,NPPV実施例,感染コントロール,および呼吸状態の不安定な症例が多くを占め,入院時のADL低下が顕著であった(BIにて安定期92.1±9.5点→入院時43.6±26.9点).また,急性増悪後にQOLが低下した症例では再度急性増悪を来しやすいこと9)や生命予後が不良となりやすいこと6)も明らかとなっている.このように急性増悪は患者自身のADL,QOLにも大きく影響し,さらに生命予後にも影響を及ぼすことが示された.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.