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はじめに
急性心筋梗塞患者に対する治療は,この20年間に劇的な変化があった.心筋梗塞の発症機序に血栓が重要な役割を演じていることが明らかにされ,抗血小板療法であるアスピリンの導入,血栓溶解療法であるストレプトキナーゼ,t-PAの導入により,心筋梗塞患者の救命率の向上および再発抑制効果が格段に進んだ.また,冠動脈閉塞を引き起こす血栓形成の基礎として,動脈壁に形成される黄色プラークの重要性が剖検,冠動脈内イメージングより明らかにされた.また最近では,冠動脈造影や冠動脈内視鏡を用いた検討から,心筋梗塞患者の冠動脈は,心筋梗塞責任病変のみならず,冠動脈全体に動脈硬化が進展していることが明らかとなった(図1)1).これらの観察からも想像されるように,心筋梗塞の再発予防には,梗塞責任病変の治療だけでなく,冠動脈全体にわたる動脈硬化を見据えた治療が必要であり,スタチンなどによる薬剤による治療効果が心筋梗塞再発予防に期待できると考えられている.また,これら以外の薬剤でも,β遮断薬やACE阻害薬などの投与により心筋梗塞患者の長期予後が改善することが明らかにされてきた.
このように心筋梗塞患者に対する治療が大きく進み,確実に急性期予後および長期予後の改善が得られるようになった.しかし,心筋梗塞が広範囲にわたる患者においては梗塞後の合併症が問題となっている.特に,梗塞サイズの影響による梗塞後心不全の進展抑制は,今後の心筋梗塞治療における大きな課題である.心筋梗塞患者に対する梗塞サイズ縮小を目的とした治療開発が望まれており,多くの臨床試験が進められている.薬剤を用いた治療と細胞治療を用いた治療の二つの戦略が現在,精力的に進められている.
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