Japanese
English
特集 呼吸機能を考える
拡散
Diffusing Capacity of the Lung
栂 博久
1
Hirohisa Toga
1
1金沢医科大学呼吸器内科学
1Department of Respiratory Medicine, Kanazawa Medical University
pp.253-257
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100994
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拡散とは
換気運動によって大気と肺胞の間に圧力(気体の全圧)差が生じ,鼻孔から吸い込まれた気体は末梢気道,肺胞まで運ばれる.末梢気道まで来ると,それ以降は圧力差がほとんどないので,気体は拡散という現象で移動するようになる(図1,2).この拡散を起こす元になるのが分圧差である.通常,ガス交換に関わる気体群の全圧力は1気圧(=760Torr)前後であるが,気体群を形成している窒素,酸素,炭酸ガスの各々の圧力(分圧)は部位によって異なっている.呼吸で一番問題になる酸素分圧(PO2)は肺胞では100Torr,前毛細管血液では40Torrであり,炭酸ガス分圧(PCO2)は肺胞では40Torr,前毛細管血液では46Torrである(図3).この分圧差が拡散現象の源になっている.肺胞と毛細管の間の拡散で最も障害になるのが肺胞膜であり,通常6枚のごく薄い膜からなっている(図4).臨床における拡散能力測定の目的は,気体がこの肺胞膜をどの程度通りやすいか(DM)を評価したいということである.疾患肺ではこの肺胞膜が厚くなったり,面積が正常よりも小さくなって酸素の拡散能が低下することが問題となり,結果として,肺胞気動脈血酸素分圧格差(AaDO2)が開大し低酸素血症を呈する.
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