Japanese
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特集 脊椎脊髄の先進的なMRI検査や解析
拡散MRI,拡散テンソル,拡散トラクトグラフィーの基礎
Invitation to the Basis of Diffusion Imaging, Diffusion Tensor, and Diffusion Tensor Tractography
立花 泰彦
1
Yasuhiko TACHIBANA
1
1量子科学技術研究開発機構未来ラボ・量子医療AI研究グループ
1National Institutes for Quantum Science and Technology
キーワード:
拡散強調傾斜磁場
,
motion probing gradient
,
MPG
,
拡散異方性
,
diffusional anisotrophy
,
拡散テンソル
,
diffusion tensor
Keyword:
拡散強調傾斜磁場
,
motion probing gradient
,
MPG
,
拡散異方性
,
diffusional anisotrophy
,
拡散テンソル
,
diffusion tensor
pp.674-681
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201925
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なぜ私たちは拡散を観察するのか
[1]小さなものさし
「拡散」を説明するときにたびたび目にするのは,コップを満たした水にインクを垂らしたときに,インクが広がっていく動きを例とするものである.しかし,インクがコップに広がっていく動きは実際には熱対流によるものが大きく,今私たちが相手にしようとしている水分子のブラウン運動である自己拡散(以後,拡散)はそれよりもはるかに微細な水分子の運動である.たとえば摂氏30℃の純水の拡散係数は2.55×10−3[mm2/s]ということを考えれば,いかに小さな動きであるかをご想像いただけるのではないかと思う.
では,なぜ私たちはこのようなわずかな拡散を観察しようとするのか.それは,顕微鏡でしか見えないような微細な世界がどうなっているのかを観測するため,である.小さなものの大きさを測るためには細かな目盛りがついた定規が必要なのと同じように,人体を構成する細胞の形や状態を見るにはそのスケールに見合った小さな目盛りをもつものさしが必要になる.生体ならばどこにでもある水分子の微細な運動というのがまさにこの目的にうってつけ,ということでものさしとして使われているのが,さまざまな拡散イメージングと解析の本質といえるだろう.どのようにものさしを使うか=観察した拡散現象からどのような情報を取り出すか,の解説は他稿に譲り,本稿では拡散を観察する仕組みや拡散テンソル表現,拡散テンソルの代表的な応用としてのトラクトグラフィーについて簡単に解説する.
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